交通事故で後足に障害を負った野良犬と一緒に散歩するOL

歩道に響きわたる軽やかな音

ある地方都市へ仕事にいった帰りに車を発車させてすぐ背後から大きな騒音が聞こえてきました。

何の音だろうとバックミラーをのぞくとOLさんが小型犬の紐をもって、小走りに車の横の歩道を通り過ぎていきました。

手作りの補助器具をつけられて散歩する元野良犬

ガシャガシャいう音は、小型犬の後ろ足に取り付けられてた器具からのものでした。

どうやらこの犬は後ろ足に傷害があるらしい様子です。

四つのキャスターが付いた二十センチ四方の板の上に後ろ半分が乗っている感じ。

正確には後ろ左足だけが板に乗せられていたかも知れません。

私が直接見たのはほんの数秒間でしたので、細かなところまでは観察できませんでした。

しばらくはバックミラーでその姿を追っていましたがいつの間にか見失ってしまいました。

再会

昨年の夏に見かけた光景だったので、1年後にふたたびその街に仕事にでやって来たとには、私はすっかり忘れていました。

ところがあれから1年以上たった、正確には10月7日土曜日の12時45分にほぼ同じ場所でOLさんと後ろ左足を四つのキャスター付きの板の上に乗せて散歩している小型犬の姿を目撃しました。

今回も車が交差点に差し掛かったところだったので車を止めてOLさんに話を聞くことができませんでした。

町に溶け込むOLさんと野良犬の散歩

どうしてOLさんかというと昨年見かけたときも今年見かけたときも同じ制服を着ていました。

近くの会社に勤務している事務員で、昼休みの昼食を終えて傷害犬の散歩に出かけるのだろうと想像しました。

交差点を過ぎたら車を止めて話を聞いたり写真を撮らしてもらおうと考えたのですが散歩の足取りは早足で、信号が青になる前に路地の中に走り去っていってしまいました。

我が家の犬に置き換えて

我が家でも二頭の犬を飼っています。
十年ほど前に動物園の里親探しで譲り受けてきた雑種と、山あいの小径の路肩でふるえていた産まれて間もない子犬です。

いまでは夫婦には欠かせない家族の一員になっているので、私としても我が家の二
頭の犬に傷害が起きたときのことがすぐに脳裏に浮かびました。

散歩中のこの犬の顔がなかなかいい。
美女?美男?で育ちの良さそうな風貌。

今日の昼休みにもガチャガチャの音

彼女が紐をもって先に早足で進むそのすぐ後ろから、ガチャガチャ音を立てながら傷害犬が小走りについてくる。

コトコト音を立てながらやってくる風景はこの地区ではすっかり定着した昼の風物詩なのかも。

命の大切さを教えてくれる風景

3年目にも出会って今回はOLさんと少し話す機会がありました。
「後ろ足、どうしたんですか」と妻がたずねました。

「車にはねられた野良犬です」事務員さんはしゃがみ込んで、おとなしくしている犬の頭をなでています。

スバル

この犬は元々捨て犬でいつの間にかOLさんの勤める会社の敷地に住み着くようになった。

彼女は犬好きで弁当の残りなどを与えていた。

この犬がある日交通事故に遭って後ろ左足に障害を負った。

犬の後ろ足の治療をしたり散歩用のキャスター付きの台車は男の整備員さんたちがつくってくれた。

遠くからコトコト音が聞こえてくるのは台車の音だったのです。

「スバル」犬の名前を聞いた妻に彼女は笑いながら答えていました。

若いOLさんは近くの自動車販売会社に勤務しているということでした。

私はその時の様子を写真に何枚か撮っていました。

寿退社

後日そんな優しい心を持った女性に写真を届けに行きました。
2Lサイズにプリントして額に入れた立派なものです。

OLさんが犬の名前を「すばる」といった謎はすぐに解けました。
その自動車会社は表通りに面した犬の名前と同じ「スバル」の軽自動車を販売する会社だったのです。

写真を届ける

事務所に彼女の姿は見えません。別の女性が応対しました。

写真を見せると、
「先月末で退社されました」

「この写真を差し上げたいのですが」
「結婚されて遠くに行かれました。私の方からやっておきましょうか」

そうしてもらうことにしました。
「お名前は」
写真を受取ながら女性。
「いや…」
私は曖昧な返事をして写真を手渡しました。
もう、あれからふた月になります。

広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする